月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 オスカリウスが手に魔力を集めると、青白い炎が現れた。これは大神官が大罪人に罰を与える<裁きの炎>だ。

 そうしてオスカリウスがアンネマリーに向かって青白い炎を向けた瞬間、神殿のドアが大きく開け放たれた。

「オスカリウス様っ!!」

 突然現れた予想外の人物に、オスカリウスの放っていた殺気が霧散した。

 オスカリウスの怒りに巻き込まれていた神官たちは、殺気の重圧からようやく開放されて安堵する。
 そして本来であれば、ここにいないはずの人物──聖女の、クリスティナの聖騎士であるアレクシスに感謝した。

「オスカリウス様、どうか怒りをお収め下さい! この者たちを害してはいけません!!」

「……くっ!」

 アレクシスに諌められたオスカリウスが魔力を断つと、青白い炎が揺らめきながら消えていった。

 オスカリウスが怒りを収め、炎を消したことで、アンネマリーはようやく自分の命が助かったと実感できた。

 アンネマリーは絶体絶命のところを救ってくれた人物の方へ顔を向け、そして絶句する。

「──っ!!」
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