月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

決着

 アレクシスが振り下ろした剣が、”ギィイイイイイインッ!!”と音を立て、火花を散らしながらツヴァイハンダーと激突する。
 その衝撃は風となり、強風が辺り一面に吹き荒れていく。

「……えっ?!」

 二人の様子を固唾を飲んで見守っていたティナは、意外な光景に目を疑う。
 そしてトールと切り結んでいたアレクシスもまた、自分の手元を見て驚愕の表情を浮かべている。

「ば、馬鹿な……っ?! 何故剣が折れるっ?! 祝福を受けた剣が、どうして……っ?!」

 アレクシスは、真っ二つに切られた白い剣を見て絶句する。先程まで光り輝いていた剣は光を失い、ただのガラクタと化していたのだ。

 聖騎士が持つ剣は、ラーシャルード神の加護を授かっている。そして神聖力を注ぎ込むことによって強度が増し、大岩でさえも真っ二つに切ることが出来るはずなのだ。
 もしアレクシスの剣が伝説の聖剣であったなら、その威力は空を裂き月にまで届いていただろう。

「どうしてって、信仰心が足りないんじゃないの?」

 アレクシスの首元に、ツヴァイハンダーの刃を突きつけたトールが辛辣な一言を放つ。

「……っ!!」

「ちょ、ちょっとトール、それは……っ」

 歯を食いしばりながら項垂れるアレクシスを見て、ティナは少し可哀想に思う。自業自得とは言え、アレクシスがどれだけラーシャルード神に献身してきたか知っているからだ。

「まあ、どっちでも良いけど、この決闘は俺の勝ちってことで。異論はないよね?」

 肝心の剣を折られたアレクシスに反論の余地はない。きっと素手で戦ってもアレクシスはトールに勝てないだろう。

「…………っ、わかった。俺の負けを認めよう」

 観念するようにアレクシスが負けを認めた。

 ある意味ティナを賭けた戦いは終わり、お互い怪我もなく済んだことに、ティナはホッと胸を撫で下ろす。
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