月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

不安

 隣国クロンクヴィストの国境に到着したティナたちは、入国を希望する人たちの列に並び、順番を待っていた。

 待ち時間が退屈なのだろう、同じように並んでいる者同士があちこちで情報交換を行っている。

 ティナが近くの商人らしき人たちの会話に耳を傾けると、何やら物騒な話題になっていた。

「せっかく迂回したのに散々だったよ」

「ああ、何度も魔物と遭遇したんだって?」

「護衛に雇った冒険者達も疲労が酷くてな。怪我人が何人も出ちまったんだ」

「死人が出なくて良かったじゃねぇか。不幸中の幸いってな」

「まあ、それもそうか……」

 魔物が出るという噂を聞いた旅人たちは、そのほとんどが迂回ルートを選択したようだった。
 ところが今回はそれが裏目に出たらしく、そっちのルートで魔物が大量に出たという。

(うわ〜〜! 何だか大変なことになってる……。怪我した人大丈夫かなぁ……)

 ティナがそんな事を考えていると、どこからかセーデルルンド王国の話題が聞こえてきた。

「え? 最近セーデルルンド王国の様子がおかしいって?」

「……ああ、以前に比べて雰囲気がな……なんか暗いんだよ」

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