月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 もちろんその聖女然とした振る舞いは、大神官の苦労が滲んだ猫被りの姿であったが、それを知らないフレードリクは、一目で<聖女>に心を奪われてしまう。

 本来であれば<聖女>に一目惚れした少年の、淡い初恋で終わるところであるが、フレードリクは<聖女>──クリスティナこそが自分に相応しいと思い込み、彼女を諦めなかった。
 何度も何度も国王にクリスティナとの婚約を嘆願したのだ。

 我儘で頑固なフレードリクが一国の王子だったことが幸い(災い)となり、また国王が子供に甘いこともあり、彼の願いは聞き届けられ、クリスティナの成人と同時に結婚することになった。

 それは、ただフレードリクの我儘が通った訳ではなく、クリスティナをアコンニエミ国に奪われたくない大神官と、優秀な血を取り込みたい王室の利害が一致したためだったのだが、当然の如くフレードリクは気付いていない。

 それから月日は流れ、フレードリクは年頃の貴族子女たちが学ぶブレンドレル魔法学院に通うことになる。

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