月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
「ティナもイロナさんの話を覚えてると思うけど、俺の母は側室でね。正妃からの嫉妬が凄くて、母さんと俺は常に命を狙われていたんだ。……まあ、よくある話なんだけどさ」
クロンクヴィストの王族が引き継いでるという、古い血統の証である<金眼>を、よりにもよって側室の子が受け継いで生まれたことを知った正妃は怒り狂ったらしい。
公爵家の出でプライドが高い正妃は側室であるにも関わらず、国王の寵愛を一心に受けるトールの母を心底憎んでいた。
そしてトールの物心がついた頃には既に、正妃が放った暗殺者が二人を狙っていたという。
「数年間は何とか耐えていたんだけど、ある時母さんが毒で亡くなったんだ。それで俺の命を心配してくれた母さん付きの侍女が、俺をこっそり逃がそうとしてくれたんだよ」
その侍女の実家が商家で王宮にも出入りしていたため、商品に紛れてトールを王宮から逃がしてくれたらしい。
「ほとぼりが覚めるまでセーデルルンド王国で身を隠すつもりだったんだけど、逃げている途中で魔物に襲われてさ。その時、魔物から俺たちを助けてくれたのがヴァルナルさん──ティナのお父さんだったんだよ」
「……お父さんが……」
「うん。ヴァルナルさんに助けて貰った後、少し話をしたら行き先が同じだからって護衛してくれることになって。その時、お母さんのリナさんと──小さいティナに出逢ったんだ」
クロンクヴィストの王族が引き継いでるという、古い血統の証である<金眼>を、よりにもよって側室の子が受け継いで生まれたことを知った正妃は怒り狂ったらしい。
公爵家の出でプライドが高い正妃は側室であるにも関わらず、国王の寵愛を一心に受けるトールの母を心底憎んでいた。
そしてトールの物心がついた頃には既に、正妃が放った暗殺者が二人を狙っていたという。
「数年間は何とか耐えていたんだけど、ある時母さんが毒で亡くなったんだ。それで俺の命を心配してくれた母さん付きの侍女が、俺をこっそり逃がそうとしてくれたんだよ」
その侍女の実家が商家で王宮にも出入りしていたため、商品に紛れてトールを王宮から逃がしてくれたらしい。
「ほとぼりが覚めるまでセーデルルンド王国で身を隠すつもりだったんだけど、逃げている途中で魔物に襲われてさ。その時、魔物から俺たちを助けてくれたのがヴァルナルさん──ティナのお父さんだったんだよ」
「……お父さんが……」
「うん。ヴァルナルさんに助けて貰った後、少し話をしたら行き先が同じだからって護衛してくれることになって。その時、お母さんのリナさんと──小さいティナに出逢ったんだ」