月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 古い血統であるクロンクヴィストの王族だが、<金眼>を持って生まれた子供の誕生は実に百年振りであった。

 そんなこともあり、国の重鎮たちが<金眼>を持つ第二王子にこそ、王位を授けるべきだと主張し出したことで、クロンクヴィストの貴族は二つの派閥に分かれてしまう。

 ──と同時に、側妃と第二王子であるトールの周りで、不審な事故が起こり始めたのもこの頃だ。

 第二王子を狙っているのは正妃と、その実家である公爵家の派閥に与する者たちなのは明白だった。
 しかし、手口が巧妙なことと、証拠を一切残さないことで責任の追求が出来ないまま、結局側妃はトールを庇って毒殺されてしまう。

 側妃を守ろうとした国王だったが、正妃を輩出した公爵家の権力は予想以上に強かった。
 愛する者を守れなかったことで、すっかり憔悴してしまった彼が気がついた時には既に、クロンクヴィスト王国の実権は公爵派に握られた後だったのだ。

 公爵派の権力が強くなっていく中、このままクロンクヴィストにいればトールが殺されてしまう、と危惧した側妃の侍女は、実家である商家と連絡を取り、トールをセーデルルンド王国へ逃がそうとした。

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