月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
「……えぇっ?! こんなに?!」

 今までティナは、魔物の素材をギルドに預けっぱなしにしていたので、いくら貯まっているのか全くわからなかった。
 正直、ギルドの役に立てば良いかと思っていたので、こうしてお金が残っているとは思わなかったのだ。

 この国では金貨一枚で四人家族が半年は生活できる。ティナ一人であれば一年は普通に暮らせるだろう。
 しかし冒険者を目指すなら、武器や防具を揃えるのに結構な金額が掛かるので、ティナにとってはとても助かる資金となる。

「それで驚かれると困るなぁ。ティナの両親の遺産も預かっていたんだけど、そっちは桁違いだよ」

「え……?! 両親に遺産があったんですか?」

「うん。私が頼まれて預かっていたんだ。自分達にもしものことがあったらティナに渡して欲しいってね。本当は二人が亡くなった時に渡すつもりだったんだけど、神殿がティナの身柄を孤児院預かりにしちゃっただろう? あいつらに取り上げられたらたまらないからね。だからずっと渡せなかったんだ」

 ベルトルドは「ようやく渡すことが出来て良かったよ」と、晴れ晴れとした表情をして微笑んだ。

「ベルトルドさん……本当に有難うございます……! どう恩を返せばいいのか……」

 ティナはベルトルドの配慮に感謝する。両親が残してくれたものは金額関係なく、ティナにとって大切な宝物だ。もし神殿の者の手に渡っていたら今頃どうなっていたかわからない。
< 27 / 156 >

この作品をシェア

pagetop