月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

変化


『ティナ、起きてー』

「……う〜〜ん……」

『お腹すいたよー。ごはん食べようよー』

「…………うぅ、ちょっと待って……」

 眠っていたティナの耳に、自分を起こす子供の声が聞こえて来た。

「……その辺りに……神官……が、いるから……その人に言って……」

 ティナは孤児院の子供がまた神殿に入り込んだのかと思う。
 神殿の隣に併設されている孤児院の子が、時々こうして忍び込んではいたずらをしていくのだ。

『えー神官ー? そんな人いないよー。もう朝だよー起きてー』

「……え〜? いない……? アレクシスも……?」

『誰それー? 僕知らないよー』

 トールにコテンパンにやられていたが、アレクシスはあれでも聖騎士の中では一番の有望株だった。
 孤児院の子供達の憧れで、有名人のアレクシスを知らない子供がいるなんて……と思ったティナは「あれ?」と思う。

「……………………え? あれ? 神殿……じゃないよね……?」

 無理やり目を開けてみれば、そこは昨日泊まった宿の部屋だった。一瞬、神殿に戻ったのかと思ったが、どうやら寝ぼけていたようだ。

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