月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 ティナの胸がどくん、と跳ねる。ここでラーシャルード教の名が出てくるとは思わなかった、というのもあるが、魔女扱いされるなんて初めて聞いたからだ。

「あいつらに魔女だって疑われたら最後、お嬢ちゃんは捕まって二度と外へは出てこられないよ! だから重々気をつけるんだよ! いいね?」

「は、はい……っ! 肝に銘じます……っ」

 顔を青くしながら返事をするティナに、店主は驚かせ過ぎたか、と少し可哀想に思う。

「念のためお嬢ちゃんもこれを付けておきな。獣魔とお揃いだよ。サービスさ」

 店主はティナにそう言うと、アウルムのブレスレット兼首輪と同じものをティナの前に置いた。

「えっ、でも……っ!」

「いいから持ってお行き。あんたも目立たないようにした方が良いだろう」

 ただでさえティナは人目を惹く容姿をしているのだ。それなのに珍しい獣魔まで連れていたら、あっという間に悪人に連れ去られてしまうかもしれない。

「……っ、有難うございます……っ! あの、私に出来ることはありますか? 何かお礼をしたいんですけど……!」

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