月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

スローライフ


 ティナとアウルムは露店で買い食いしながら、旅に必要な物資を購入して行った。

 アデラに貰ったブレスレットは優秀で、以前はチラチラと送られていた視線も、今は全く送られて来ない。
 まるで誰もティナとアウルムの存在に気づいていないようだ。

 ティナは人の視線を気にする必要がない開放感を噛み締めていた。

 聖女だった頃からずっと、人の視線に晒されて来たこともあり、自分では慣れていたつもりだったが、誰も自分を気にしない状況がこんなに快適だったのかと、ティナは初めて実感することが出来たのだ。

(こっちから声を掛けない限り気付かれないってすごい! やっぱりアデラさんはすごい魔道具師なんだ!)

 アデラの店で購入した地図もとても便利だった。
 使い方は簡単で、ティナとアウルムの魔力を登録すれば、地図上に二人を示す点が現れる。ティナは赤い点、アウルムは青い点なので、お互いどこにいるのか一目でわかるのだ。

 ティナが現在地の確認のために地図を眺めていると、少し離れた先に小さい森があることに気がついた。

「ねぇ、アウルム。アウルムは宿に泊まるのと野営どっちがいい?」
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