月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

精霊のレリーフ



『……ナー、……ティナー。起きてー。大変だよー』

 何度も聞こえるアウルムの声に、ティナは深い眠りから覚めた。

「……え? 何かあったの?」
 
 トールたちと別れてから毎朝、ティナはアウルムに起こされている。
 しかし、いつもとは違うアウルムの声に、ティナは慌てて身体を起こした。

 深い眠りから覚めたにしては、ずいぶん頭がスッキリしているし身体も軽く感じる。久しぶりに熟睡出来たようだ。

『んとねー。精霊が来たみたいなのー』

「えっ?! 精霊が?!」

『そうなのー。今は見えないけどー。でも匂いがするのー』

 アウルム曰く、二人が眠っている間に精霊がやって来たかもしれない、と言う。

「そっか……今はいないのか……」

 精霊に会ってみたかったティナはガッカリする。

『でも匂いはすごくするのー。近くにいるかもー』

「本当?! この近くにいるの?!」

『昨日より強い匂いがするのー』

「え?!」

『もしかしたらあそこで眠ってるかもー』

 アウルムが言うあそことは、部屋に掛けられている精霊のレリーフだ。

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