月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
(だけどその後は? 婚約の話が出ているトールに会いに行ったら迷惑じゃない?)

 以前ロリアンの宿で聞いた噂話が、今だにティナの心に引っかかっている。

(婚約者がいる王子様に会いに来た冒険者の女……。誤解されるよねきっと……)

 ティナにその気がなくても、周りの人間はトールの元恋人らしき女が自分を取り立てて貰おうとやって来た、と勘違いするかもしれない。

 机にうつ伏せになったまま色んなことを考えていたティナは、だんだん眠くなってしまう。

 そうして、うとうとしていたティナは、そのまま寝落ちしてしまったのだった。




 * * * * * *




 ティナは気がつくと暗闇の中にいた。

 不思議なことに闇の中にいるにも関わらず、恐怖心は全くない。
 
 きっとこれは夢なのだと、ティナは何となく思う。

 ティナがぼんやりと佇んでいると、どこからともなく小さな光が飛んできた。

 その小さな光はとても弱々しく、今にも闇に溶けてしまいそうだった。

 そんな小さな光を可哀想に思ったティナは、小さい光を助けてあげたくなった。

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