月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

迷いの森


 フラウエンロープにあるビュシエールという街から出発したティナは、アウルムの背中に乗って広大な森を駆け回っていた。

 流れて行く景色を眺めていたティナは、そこで生息している植物を見て、「あれ?」と思う。

「あれ、もしかしてものすごく珍しい花なんじゃ……?」

 冒険者に憧れていた聖女時代のティナは、ギルドの依頼で薬草などの素材を収集をする時に備え、図鑑で植物を調べたことがあった。

 図鑑の挿絵は珍しく貴重な花や草が鮮やかに描かれており、ティナはそれらを眺めながら、いつか本物を見てみたい、と夢見ていたのだが……。
 一般的に珍しいとされている植物が、まるで雑草のようにそこらじゅうに生えているではないか。

「んんー? よく似た植物なのかな……? なかなか見つけるのが難しい花だったと思うけど……でもなぁ……」

 ティナは気になりながらも、ま、いっか、と気を取り直す。
 今はこの森の地形を調べ、どこか安全な場所がないか調べることが優先なのだ。

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