月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 ノアはティナに貴重な情報を惜しむことなく教えてくれた。ならば自分も正直に話さなければ、と思ったのだ。

「……なるほどのう。あの夫婦はティナの両親じゃったのか」

「え?! ……あっ!!」

 先ほどの会話で、ノアは確かに冒険者の夫婦が来たと言っていた。その後の会話で何度も驚かされたから、すっかりそのことが頭から抜け落ちていたのだ。

「じゃあ、両親が残してくれたメモにノアさんのことが書かれてるかも?」

 昨日の夜にでもメモを確認しようと思っていたのに、すっかり失念していたらしい。
 以前のティナならそんなことは無かったのだが……どうやら最近忘れっぽくなったのかもしれない。

「ふぉっふぉっふぉ。おそらくそのメモにはこの森のことは書いとらんじゃろな。ここが<迷いの森>と言われてる所以じゃて」

「え、<迷いの森>……?」

 ティナはこの広大な森がそう呼ばれているとは全く知らなかった。街の人たちには常識だったので、わざわざ話に出さなかったのだろう。

「なんじゃ。知らずにここまで来たのか。そりゃまた豪胆というか何というか……」

 今度はノアが呆れる番だった。
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