月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
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執務室から出て、応接に入ったティナは、備え付けられているソファーに座ると、バタッと横に倒れ込んだ。
「うあぁぁぁああーーー!! どうしよーーーーーーっ!!!」
ティナは心の中で燻っている感情を一気に放出するように、思いっ切り叫ぶ。
それは、この最上階の部屋全てが防音になっているからこそ出来る技だった。
とにかく再会してからのトールの言動がヤバい。学院では本当にただの友達のように接してくれていたのに……と、ティナはその違いに混乱する。
(うぅ……っ。私が自意識過剰なだけ?! 自惚れちゃってるの?!)
ティナは誰も見ていないのを良いことに、ソファーの上でバタバタと悶絶する。
ただでさえ、仄かに恋心を抱いていた相手なのだ。その相手が意味深な言葉と態度を連発するものだから、流石に自己評価が低いティナでも、トールが自分に好意を抱いてくれていると思うのは仕方がないことだろう。
しかしトールは思わせぶりな言動をしているだけで、はっきりとティナに告白した訳ではない。
(あー、でもアレだ。もしかしたら親友のように思ってくれているのかも)
トールの本心がわからないティナは、色んな可能性を考えてみる。これはもしトールがティナに持つ感情が恋愛で無かった時の保険なのだ。
期待するだけして、それが勘違いだったら目も当てられない。確実に心が折れてしまうだろう。