月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
 アコンニエミ聖国は<金眼>を持つトールをずっと目の敵にしていた。それにトールのことを「忌み子」だと表現するのもあの国だけだ。

 そして冒険者に憧れていたティナを無理やり神殿に連れて行き、聖女として奉仕させ、あまつさえ魔力を搾り取り、一生その身を縛りつけようとした。

 アコンニエミ聖国は、ティナと同じような数多の人々の犠牲で成り立っている国、と言っても過言ではないのだ。

 いつかアコンニエミ聖国には今回のことと、ティナが受けた仕打ちに対して報復しなかればならないだろう。その時は徹底的に潰すつもりでいる。

 だけど今は、とにかくティナに会いたい──会いたくて会いたくて、その笑顔で自分の心を癒してほしい、とトールは切に願う。

 ──このままではきっと、心までも凍てついてしまうだろうから。





 それからトールは休むことなく、ひたすらフラウエンロープへと突き進んだ。
 アコンニエミ聖国から追手が来る可能性を危惧していたが、警告が効いたのか何事もなく進むことが出来た。

 そうして王宮から飛び出して二週間ほど経った頃、トールはついにフラウエンロープに到着する。

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