月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

準備

 苦渋の決断を下したベルトルドは、こうしている場合じゃないと気持ちを切り替え、先程届いたばかりの箱を開ける。

「ほらティナ、ギルドカードが出来たよ。これでティナも正式な冒険者だね」

「わぁ……! 有難うございます! 嬉しいです!」

 自分の名前とランクが示されているカードを見たティナは、ようやく憧れだった冒険者になれたと、嬉しそうにしている。

「ほらほら、喜ぶのはまだ早いよ。カードに魔力を注いで所有者を確定させないとね」

 魔力の波長は人によって違う。ギルドカードはその仕組を利用し、自身の魔力をカードに読み込ませることで、本人にしか使えないようにプロテクトを掛けることが出来るのだ。

「あ、そうですね! やってみます!」

 ティナがカードに魔力を流すと、表面にギルドのマークが浮かび上がった。どうやら魔力の読み込みが完了すると浮かび上がるらしい。

「うわぁ……! 不思議ですね!」

「それは錬金術学会と魔術師協会の合作でね。かなり難しい術式で作られているそうだよ。失くしたら再発行に銀貨一枚かかるからね。注意するんだよ」

 この世界の最先端技術が使われているカードはかなり高価らしい。銀貨一枚はティナの一ヶ月分の生活費費ぐらいの金額だ。
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