月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

精霊樹


 精霊たちに導かれたティナとアウルムは、湖の奥にある精霊樹へと辿り着いた。

 精霊樹は神々しく、たくさんの実が光る幻想的な光景は、見るもの全てを魅了すると同時に畏怖の念を抱かせる美しさがあった。

 しかし今、この精霊樹は力の源であるルーアシェイアの弱体化の影響を受け、精霊が生まれにくくなっているという。

《あなたの神聖力を精霊樹に分けて欲しいの》

《幹に手を当てて、力を流し込むのよ》

《もし反発されたらすぐ離れてね》

「はいっ、やってみます!」

 ティナは精霊たちに言われた通り、精霊樹に近づくとその幹に手を当てる。
 すると、まるで包み込むような優しい気がティナの身体を駆け巡った。

《精霊樹が受け入れたわ!》

 ティナは精霊樹から流れて来た気と自身の魔力を馴染ませる。誰にも言われていないのに、そうすることが正解だと何故か理解できたのだ。

 そうして、ティナは自分が持ちうる神聖力を全て精霊樹に捧げるつもりで流し込んで行く。

 身体中からごっそりと何かが抜けていくような感覚に襲われるが、ティナは構わずに神聖力を流し続けた。
< 535 / 616 >

この作品をシェア

pagetop