月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
大魔導士
ティナを追って森の中を進んでいると、ルシオラが何者かの魔力を感じ取った。
トールはその魔力の持ち主が誰なのか確認するため、ルシオラに魔力の持ち主がいる場所へ案内を頼む。
そうして魔力を辿った先でトールたちは、ポツンと建っている小さな小屋を発見する。
「人が住むにしては随分小さいな」
《小人族でもいるのかしら?》
警戒したトールたちが近づいてみると、その小屋は思ったよりも小さかった。もしかすると住居ではなく休憩所のようなものかもしれない。
「とりあえず、誰かいないか確認しよう」
そう言ったトールがドアをノックしようとした時、中から出て来た人物と鉢合わせしてしまう。
「わ、すみません!」
「ほうほう。こりゃまた珍しい客人だわい。今度は精霊を連れとる坊ちゃんか」
「え……っ」
トールは小屋から出て来た老人を見て目を見開いた。
一目でルシオラに気付いたこともそうだが、老人が持っている魔力が尋常ではなかったからだ。
それに老人の顔をどこかで見たような記憶があるのも気になった。
「あの、俺とどこかでお会いしませんでしたか?」