月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。
時空間魔法
ノアがトールに振る舞ってくれたティナの手料理は、とても優しい味がした。
ただそれだけで、ティナがノアをすごく気遣っていることが感じ取れる。
ティナとノアが共に過ごした一ヶ月と言う時間は、人によって短いと感じるかもしれない。だけど二人にとっては、お互いを大事な存在として位置付けるには十分な時間だったようだ。
トールはティナの大事な存在となったノアをとても羨ましく思うと同時に、心から尊敬した。彼は警戒心が強いティナの心を一ヶ月で開いたのだ。自分は再会してから半年近くもかかったというのに。
しかしティナがノアに懐いたのも納得だ。ノアは器の大きさを感じさせる何かと、独特の雰囲気を持っているのだ。
ちなみにトールもノアが持つ巨大倉庫に驚かされている。
そこは時間の干渉を受けないから、いつでも当時のままの状態で取り出せるようになっていた。
だからティナの手料理も、トールは出来立てを美味しく食べることが出来たのだ。
「時空間魔法……本当に便利ですね」
「ふぉっふぉっふぉ。そうじゃろうそうじゃろう。使えて損はないからのう。坊ちゃんも練習してみるがええ」