月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

出発

 出発の日の朝、ティナはトールと待ち合わせしているギルドのホールへと足を運ぶ。
 まだ早い時間ではあったが、すでにトールは到着していて、ティナの姿を見つけると嬉しそうに近づいてきた。

「おはようティナ。ほら、カードを受け取ったよ」

「おめでとう! トールも冒険者の仲間入りだね! 改めてよろしく!」

「こちらこそ、よろしく!」

 二人は笑顔で握手を交わす。その場にいた冒険者達も、新人で後輩となるティナ達に温かい眼差しを送っている。

 つい先日まで学院に通いながら、聖女としての役目に加え王妃教育に勤しんでいた自分が、自由の象徴となっている職業である冒険者になれる日が来るとは……ティナは考えもしていなかった。
 そういう意味では、フレードリクに感謝しても良いかもしれない。

「まずは装備を買い揃えないとね。やっぱりトールは魔法使いの装備かな?」

「そうだなぁ。俺、魔法使いより剣士をやってみたいな」

「あ、そっか。トールは戦闘演習が得意だったもんね。トールが剣士……うん、格好良い!」

「……っ! か、格好良いかどうかはわからないけど、魔法と併用しようと思ってるんだ」

「なるほど! 魔法剣士ね! トールの戦闘スタイルにピッタリだね!」
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