辣腕海運王は政略妻を容赦なく抱き愛でる【極上四天王シリーズ】
 ツアーに参加したくらいなのだから、視察をするにあたって興味を示してもいいくらいなのに。



 キュランダ村に到着して、ツアー客はここでフリータイムになる。時刻は十時三十分を回ったところだ。

 集合時間は十三時。ランチは自由に食べられるが、あちこち見たいのでそれほど時間は取れなそうだ。

 高原鉄道を降りたとき、コウさんと離れた。

 村は狭いのでどこかで会うかもしれない。彼の乗り物酔いを心配したが、体調は悪そうに見えなかった。

 添乗員に配られた村の地図を広げて、最初に行こうと考えていた野鳥園へ向かおうとしたが、そこへまた赤毛の外国人男性が現れた。

「君の恋人はどうしたんだい? 寝てばかりいるあんなつまらない男はやめて一緒に行こうよ」

 私たちのことをやはり見ていたようだ。

「彼は疲れているんです。すぐに……あ! ここよ!」

 こちらへ歩を進めてくるコウさんを認めて、手を振った。

「では、失礼します。旅を楽しんでください」

 外国人男性から離れてコウさんの方へ近づく。すると、コウさんは笑みを浮かべ、私の腰に腕を回して抱き寄せた。

 え……?

 びっくりして仰ぎ見ると、彼の顔が近づく。突然のことに心臓がドクンと大きく跳ねる。

「は、離してください」

「やつはまだ見ている。合わせた方がいいんじゃないか?」

「……ち、近づけるだけですよ」

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