散夏咲秋
 そんな土地柄に住んでいるからなのか、最近不思議な夢を見る。昏い水の夢を。

 水の中なのに息苦しさもなく、身体に絡みつく朝顔が、水面から遠ざける――そんな夢。


「……夏が終わってしまうのが、さみしいのかしら」


 遠ざかる夏の季節に置き去りにされ、忘れ去られてゆくのを、人魚が哀しんでいるからなのだろうか。そんな事を考えつつ海の近くまで来た時――また、水の夢を見た。


 夜は終わって、煌めく夜明けの夢を。

 

 水面からあたたかな光が射し込み、鮮やかな朱い葉をつけた秋の枝が、目の前に降りてくる。


 その刹那、人魚が微笑む幻想を見たような気がした。夢から覚めた先で見たものは、それを証明するものだった。



 水面に浮かぶ朱い葉が、夢じゃないと告げている。



「秋が咲いたのね」



 
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

七狐幻想奇譚
椿灯夏/著

総文字数/11,626

ホラー・オカルト37ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
七夜続く夏祭りの最中、七夜かけて七狐の祠に通う。 七夜目にあるウタを唄えば、狐の神様がどんな願いでも叶えてくれる。 ――遭ってはいけなかった ――触れてはいけなかった 自己主張が苦手な少女 *望月桃花* 都会から来た少年 *神崎夏野* 願いを叶えるらしい、狐の神様 *茜* 噂は迷信か、真実か…… 【奇譚―キタン―】 珍しい話、不思議な物語 【感想ありがとうございます】 斎藤悠様*赤猿様 詩羅様* 祭り前日まで見直し完。
永遠に解けない夢を
椿灯夏/著

総文字数/2,558

恋愛(純愛)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
君と永遠に解けない夢を。 ずっとこの夢(まほう)が解けませんように。
魔王様と暁の姫
椿灯夏/著

総文字数/4,213

ファンタジー9ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
すべての始まりはたったひとつの願いだった。 “大切な人を失いたくない” 「例え偽りの記憶でも構わない。自分にとって、本物なら」 始まりは雨。 「探したよ“魔王様”」 ーー例えどんなに酷い物語(結末)だとしても。 姫のために紡ぐ(生きる)と決めたんだ。もう、何からも俺は逃げたりしない。 これは明けない世界で紡ぐ夜明けの物語。 (更新お知らせ) 雨空の出会いまでが更新 こちらの魔王様の物語は旧作品としてさせていただきたいと思います。こちらも更新しつつ、新の方にはプラスがつきます。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop