おじさんフラグが二本立ちました






「この紅茶美味しい」


薔薇の柄が綺麗なティーカップの中の
琥珀色に見惚れる・・・


「そうか、また連れて来てあげるよ」


サラリと誘うなんて
図々しいというか、なんというか


「・・・」


無反応を決めて目線を反らすのに


「な?」
甘い声で催促するからタチが悪い


「機会があれば」
断りの模範回答も


「機会は作るものなんだよ
だってこうして今日出会ったのも
何かの縁だし」


誘導にまんまと嵌り
「縁?」と聞き返す私


「世の中は人で溢れているのに
人生の中で出会う人に縁があるんだよ良いか悪いかは別にしてね?
だからその縁を大切にしなきゃ」


「ふ~ん」


「お嬢、名前聞いてないね」


「みよです」


「みよは彼氏はいるの?」


「いません」


「じゃあ、試しに俺と付き合わないか?」


「嫌です」


「ハハ、嫌か、ハッキリと断られたの初めてだ」


そう言うと立ち上がったおじさんは、私のそばまで来ると跪き、戸惑っている私の手を取った


「・・・?」


「俺が付き合いたいんだ、頼む」


告白というより懇願に近いそれは
おじさんフラグが立った瞬間だった



[困る]以外の言葉は見つからなくて


・・・いつしか負けた


「私はおじさんの事好きじゃないですよ、それでも良いですか?」


「良いよ、必ず好きになるから」


どこからくる自信なのか、スッカリおじさんのペースに巻き込まれてしまった


食事が終わると窓際のソファー席に移動する

大きな窓の中の唯一開く滑り出し窓を押し開けると
潮の香りと波の音が聞こえる


髪が風に靡いて前髪を押さえると
おじさんが頬を両手で挟んだ


「・・・っ」


避ける間も無く唇が重なる

瞬間唇を割る舌に、逃げようと動いたけれど
挟まれた頬の手がそれを止めた


歯列をなぞり絡みつくような口付けは啄むようなキスで終わった


「嫌だった?」


「嫌、に決まってる」


狛犬へ視線を動かせば、それに気づいたおじさんはクスッと笑った

経験したことのない大人の甘さに
力が抜けた身体はおじさんに抱かれたまま車に乗せられていた









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