おじさんフラグが二本立ちました


病室を出ると院長が待っていてくれた


「お待たせしました」


「慣れないベッドで寝たから疲れただろ」


「大丈夫。若いから」


「ハハハ、そっか若いよね」


柴崎総合病院を出たところにあるレトロな喫茶店は院長がほぼ毎日来る店だという

木の扉を開けると一瞬でコーヒーの香りに包まれた


「良い香りだろ」


「ここで暮らした〜い」


「喜んでくれたなら良かった」


店内中央に大きな焙煎の機械があって
好みに合わせてロースト時間の調節やブレンドも頼めるらしい

二人でボックス席に座り
同じモーニングセットを注文した

無垢の床は味のある深い色で全体的に
とても雰囲気の良い店


「ここの床はドリップ後のコーヒー豆で磨いてるんだって」


「へぇ」


黒糖パンのトーストとソーセージ
オムレツにサラダと大きなマグカップに入ったコーヒーが院長のオススメらしい


「美味しそう」


携帯電話で写真を撮る


「彬に?」


「ううん。記念に」


「みよちゃんは可愛いな」


「知ってる」


「ハハハ」


「それにしてもマグカップがいいね」


「だろ?普通の量じゃ足りない俺にはたまらない店なんだ」


「いただきま〜す」


香りの良いコーヒーに
肩の力が抜けた気がした



「彬、午前中には動けるようになるよ」


「良かった」


「聞いても良い?」


「スリーサイズは秘密です」


「クッ、そうじゃないよ」


「フフ」


「彬とは順調?」


「・・・ん・・・?」


「それで彬が荒れたってこと?」


「この話、長くなるけど良いの?」


「みよちゃんが良いなら
僕は全然構わないよ」


「それじゃあ」


そう言って始まった彬との話は
お試しから順に進み
院長は途中デザートも注文してくれた


「彬と別れたら、是非次は
俺とお試しから始めて欲しいな」


「大人の冗談は未だ見極めができないからダメ」


「冗談でもないけどね」


「フフ、みよはおじさんに人気なんだよね」


「そっか、俺も十分おじさんだよな」


少し長くなったかと心配したお喋りも
大した時間は経っていなかった


「さぁ、戻ろうか」


「ご馳走様でした」





病室に戻るとベッドの脇に腰掛ける


「戻ってきた」


「戻ってくるでしょ」


「もう俺の元には戻って来ない気がしたんだ」


付き合いのことも含めたそれは
軽く流すことにした


「感謝してね、命の恩人だよ」


「一生感謝するよ・・・でも
昨日は何でみよが?」


「彬の携帯電話からの着信でね
出たら玲奈ママだったの」


「そうか、玲奈がかけてくれたのか」


「そうよ」


「家に居たのか?」


「実はね、彬の実家でお姉さん一家とご飯を食べてたの」


「・・・は?」


「松本さんが迎えに来てくれて
送ってもらったの」


「そうか」


「そしたら酔っ払いの彬が倒れてさ
ピクリとも動かないから慌てて院長に電話したら、連れておいでって」


「・・・心配かけてごめん」


「うん」












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