ド底辺の「たらいまわし王女」の私が「獅子帝」と呼ばれるおっさん皇帝に嫁いだら、超溺愛が始まりましたが……。あの、これって何かの間違いではありませんか?
 だけど、わたしは皇帝に嫁ぐ身。そんなことを言えば、彼に迷惑がかかってしまう。迂闊なことを言ってしまったことが原因で、あとで彼が疑われるようなことがあるかもしれない。

 なにより、彼自身が迷惑に違いない。

「夜、眠れなくって、最初の屋敷でお借りした恋愛小説を読んだのです。それが、悲しいシーンで。涙が止まらなかったのです。そうそう。小説は、どうすればいいでしょうか?それと、彼女もです」
「そうか……」

 一瞬、彼はわたしから視線をそらした。彼の視線は、わたしの乗っている牝馬に移った。
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