落ちて来たのは、イケメンでした。
「……これって、プロポーズ?」

 信じられなくて、聞き返してしまう。
 だが、トオルは気を悪くすることなく「そうだよ」と微笑んだ。
 だからサチは溢れる疑問の一つを口にした。

「……私たち、付き合ってたの?」

 まずはそこからだと思う。
 好きだという言葉自体、今初めて聞いた。

「え? 俺はそのつもりだったんだけど……。え? まさかサチは違ったのか⁉︎」

 焦り出すトオルに少し呆れる。
 確かに状況的には付き合っていると言えなくはないが、明確な言葉がなかったのだからハッキリそうとは言えないだろう。

 これは後で話し合いが必要なのかもしれない。
 明確な言葉もなく付き合っていると思っていたトオル。
 明確な言葉がないからセフレなのではないかと思っていたサチ。

 どちらもお互い様だが、だからこそ今後また勘違いしない為にも話し合わなくてはいけないだろう。


(でも、とりあえず今は……)

 もしかしたら断られるのかもしれないと焦り始めるトオルにクスリと笑う。

 見守っている夫婦も、いつの間にか寄り添ってサチの返事を心配そうに待っていた。
 奥さんが少々羽目を外しすぎでも離婚していない夫婦だ。なんだかんだ仲が良いのかもしれない。

 サチは指輪の箱を持つトオルの手を包むように触れる。
 そして心に灯った喜びを言葉にした。


「ありがとう、トオル。とっても嬉しい。……私をあなたのお嫁さんにしてください」

 承諾の返事をしながら、初めて会ったあの夜のことを思い出す。



 どうやらあの日落ちてきたのは、天使でも不審者でもなく――未来の旦那様だったらしい。

END
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