私ってそういうこと⁉ー覚醒編ー/三部作最終話❣

❷私は彼を知った!

その1
夏美



中間試験の終わった翌日、月末に開催を控えている南玉連合の幹部会に備えた、執行部3人による打合せを持った

「…じゃあ、真澄は正式に議案上呈してきたのね?」

「ああ…、東京都下の西部と千葉北部、それに横浜…。この他県、3つの後続組織と正式な合同会合を呼びかける決議になるな」

「達美…、これって、急進派が荒子のイケイケ路線を加速させるってことで、自己都合に利用してるとも思えるけどね…」

「まあ、そう言ってしまえばそれで終るだろうさ。でも夏美…。私にはさ、このこと自体、悪いことではないと思えるんだ。今の南玉のスタンスからして、中期的な展望として他県との友好関係の枠組みを考えるのは必然性があるよ。”こういう機会”を持つことはさ、有意義な場になるんじゃないかな?」

「うーん、要は時期的な捉え方になるかな。私ははっきり言って、時期早尚だと思うけど…」

「うん、わかった。じゃあ、鷹美はどうだい?」

「私はちょっと、いまは何とも…。かなり微妙なところだとは思いますが…」

この秋からは、総長補佐控えに1年の矢吹鷹美が就いている

正直、彼女はその就任には消極的だったんだけど、達美と私の強い説得で何とか首をタテに振ってもらった経緯があった…

...


今年の春、新総長がほぼ確定していた高原亜咲が家庭の事情で就任直前に辞退したことで、この刃根達美が急きょ総長のポストに就き、私が総長補佐ということになった

補佐控えには前任の先輩が留任で残ってくれたんだけど、これは当面、新執行部の組織運営が軌道に乗るまではと言うことで、OB・OGや先輩方の配慮だったのよね

...


そもそも…

私たちの代が2年に上がる前…、今年の初めくらいには南玉内部の守旧・急進二派の対立図式はますます顕著となって、1年のメンバーも両派のすみ分けが鮮明になっていたわ

ざっくり言って、1年の急進派は木戸真澄が先頭に立ち、それを守旧派の私が前面で迎え撃つと言った絵柄だったわ

もうこの頃では1年の両派が先輩そっちのけで、何かにつけて、しょっちゅういがみ合っていたし(苦笑)

...


そんな状況だったんで、当時総長だった水田先輩らは、次の代の執行部ポストを巡った対立の激化を危惧されていたんだけど、この春の代継ぎはあっけないほどスムーズに済んだわ

これには、昨秋、次のリーダー候補を想定して高原亜咲を総長補佐控えに就かせ、我々の代への継承に下地を敷いていたという面があったのは確かだったと思う

でも実際には、真澄ら急進派自体に自分たちの代で執行部に入って組織を舵取りをしようという目論みが、所詮はなかったんでしょうね

彼女たちの狙いは”その次”だったのよ

そこで、”狂犬娘”合田荒子ということになる訳…





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