巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
私の様子を見守っていたお頭が何かの異変を感じたのか、慌てた声で「何だとっ!?」と叫ぶ。
お頭が叫ぶと同時に、私を覆っていた闇属性の魔力が弾け飛ばされ、魔法陣が割れた音と共に砕け散る。
「馬鹿なっ!?」
「な、なんだ!? 何が起こって──……!?」
「お頭ぁ!?」
お頭が信じられないとでも言うような驚きの声をあげると、テオと子分達が尋常じゃない様子に怯えだす。
「俺の結界に干渉してくる……!? 一体何者……!?」
お頭が部屋中を見渡している姿に、彼は闇魔法で建物ごと結界をはっていたのだろうと思い至る……私達が逃げ出さないように。
部屋の中をよく見てみると、透明の膜のようなものが天井や壁、床にピッタリと張り付いていて、これが結界なのだと理解する。だけど、今その結界は何者かに破られようとしているのか、立ち込める闇の気配が段々と濃密になってくる。
(この感じ……ホントにエルが……!?)
よく知っているエルの気配と共に、いつも彼が纏っている薫りが私を包む。まるでエルが守ってくれているような、そんな錯覚に陥ってしまいそうだ。