巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
22 エルの正体
突然やって来たこの孤児院の管轄らしいラキトフ神殿の人間に、私は拉致同然に馬車へ押し込まれてしまう。何とか逃げ出す方法はないかと考えるけれど、両脇を固められているので身動きが取れない。
そんな中、司祭から『紅眼の悪魔』との関係について聞かれたけれど、それが本当にエルの事なのか分からない私は返事を躊躇ってしまう。
とりあえずエルを知っているであろうこの司祭から、何かしらの情報を引き出せないかと考えた私は質問をぶつけてみる事にする。
「……あの、『紅眼の悪魔』って、どんな悪魔なんですか? 縁結びの神様じゃないんですか?」
もしかしたら神様のあだ名的な感じで悪魔って表現をするのかも……と思った私の質問に司祭は怪訝そうな顔をする。まるで「何いってんだコイツ?」とでも言いたげだ。
「……お前は何を言っている? あの悪魔が縁結び? ましてや神とは正気か?」
──ぐぅ。質問しただけなのに、まさか正気を疑われるとは……! でも予想通りの返答にエルはやはり悪魔なのだと確信する。
(じゃあ、あの廃神殿はエルの神殿じゃなかったんだ……)