巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。
(一刻も早くこの恋心を友情に昇華させないと……いつかエルに迷惑をかけちゃう)
私は必死に自分へと言い聞かせる。この人の腕の中は私のものじゃない──私が知らないお姫様か令嬢のものなのだ──と。
「有難うございます……! すごく嬉しいです……!」
エルの心地よい声が私の耳を震わせる。美形な人って声も綺麗なんだと改めて実感する。顔だけじゃなくて身体の作りからして普通の人と違うのだろう。
何となく自分から離れるのが嫌だった私は、エルが身体を離すまでこの状況を感受させて貰う事にする。
「喜んでくれるのは嬉しいけれど、エルに頼まれなくても私はエルの味方だよ? 他にして欲しい事無いの?」
これと言った特技がない私に出来る事は限られてしまうけれど、それでもエルの役に立ちたいのだ。
「……では、貴女の刺繍が入ったハンカチをもう一枚いただけませんか?」
「ハンカチ……? それだけでいいの?」
「はい。貴女にいただいたハンカチを洗っている間、手元にないのが寂しくて。以前からもう一枚欲しいなと思っていたんです」
(そう言えばエルに贈ろうとエルの名前を刺繍したっけ……あ!)