巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。

30 エルの過去(エル視点)


 サロライネン王国の第一王子として生を享けた僕には膨大な魔力があった。
 この世界で魔力は力の象徴だ。魔力量が多い=力を持っている事になる。

 だから身分が低い者でも王宮騎士になれるし魔導師にもなれる。魔力量が多い人間は将来を約束された人間なのだ。


 そういう意味で王族に生まれた僕の魔力量が多かったのは当然というべきか。

 しかし王族の中には魔力量が少ない者も少なくなく、そんな王族は王位継承権を持っていたとしても順位を低くされてしまう。

 それはこの国の国王は王族の中で一番魔力が多い者が選ばれる、という古い習わしがあるからだ。

 正直今の時代にはそぐわない悪習だと思う。しかし国民にとっては愚王でなければ問題ないらしく、自分の国の国王の魔力が大きければ大きいほど尊敬の念を持つようだった。


 第一王子で膨大な魔力量を持つ僕が王太子になるのは当然の結果だった。むしろ第二、第三王子でなくて良かったと思う。余計な争いをしなくて済むということは王宮が平和になるからだ。

 だから誰もがこのまま僕が次期国王になると思っていた──だけど、そんな未来は僕が持つ属性のために揺らぐことになる。
< 220 / 503 >

この作品をシェア

pagetop