巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。

 今迄はランベルト商会の人に頼りっぱなしだったから、めったに街へ行かなかったし。
 

 ちなみにランベルト商会は帝国に本店がある、世界中に店を構えるものすごく大きい商会だ。なのにこんな小さい孤児院にも優しく接してくれるので本当に有り難い。


(王都に行っていた分遅れている刺繍を早く仕上げて納品してしまおう。その時お店に行って、色んな話を聞かせて貰おう)


 私は孤児院の運営の足しにと、ハンカチや小物に刺繍をする内職をしている。図案やモチーフを考えるのがとても楽しくて、もし私が巫女以外の職に就くのなら、仕立て屋さんでお針子として働いていたかもしれない。


 本当は寝てしまおうと思っていたけれど、驚きの体験をしたせいか眠気がすっかり飛んでしまったので、折角だし止まっていた刺繍の仕事をやってしまうことにする。


(それにしても、悪魔って全員あんな感じなのかな?)


 私が見習いなので分からないのか、エルからは全く禍々しい気配はしなかった。きっと高位の悪魔は気配を隠すのもお手の物なのだろう。


(──とにかく、これから忙しくなるだろうし、頑張るぞ!)

 そうして悪魔と巫女見習いである私の奇妙な逢瀬(?)が始まったのだった。
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