巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。

 気がつけば、いつの間にやら私は部屋の隅へと追いやられていて、しかもエルが両手を私の顔の横に付いているから、まるで囲われているみたいで逃げ場がない。

 これはどういう事だと思っていると、エルから得も言われぬ良い香りが。


(……あれ? 何だか凄く良い香りがするぞ……? さてはエルの奴、高い香水を付けているな?)


 良い匂いに気を取られてされるがままでいると、エルががっくりと項垂れて盛大に溜息をついた。


「………………はぁ。全く……貴女には危機感がないのですか? あまりにも貴女が無防備だからこうして簡単に捕まるんですよ。僕が言うのもおかしいとは思いますが、お願いですからもっと男に対して警戒して下さい」


「……はい、すみません」


 余りにも真剣なエルの表情に思わず謝罪してしまう。そう言えば私も年頃の娘だったのだと今になって自覚した。

 そんな言葉を今まで言われた事が無かったからすっかり忘れていた……まあ、こんなくたびれた女を襲うような特殊性癖の人間はテオぐらいしかいないと思うけれど。
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