「Of My Disteny」ー手、繋ごうー
いやいやいや、ちょっと待って!

それはもう距離縮め過ぎじゃない!?

今欲しいのは心の距離で物理的な距離じゃないんだけど!?

「それはじゃあスタート!」

学園長の声で開始された突然の風船割ゲーム、その声と同時周りの子たちは次々に風船を割り出した。

え、そんなものなの?
みんな何のためらいもなくパートナーと抱き合って…

「高橋さん」

一ノ瀬くんのが風船を持ってきた。
もうそれだけで私の心臓はバックバク大きな音を鳴らしてる。

お腹の前に差し出されたハートの風船、ぎゅうっとお互い抱きしめ合って割るには一ノ瀬くんの背中に手を回さなきゃ…

大丈夫、できる、私にだってできる。

一ノ瀬くんの腕の下、そぉっと手を伸ばした。

「あ…っ、やっぱ無理ですっ」


パンッ


風船が割れた。

ひらひらと1枚のこれまたハートの形をしたピンク色の紙が出て来た。

それを一ノ瀬くんが拾おうとした時、すかさず学園長がスッと現れた。

「今のは反則よ」

拾ったハート形の紙を私たちに見せながら、ちょっとだけ眉を吊り上げていた。

「お腹に挟んで抱きしめ合って割ることがルールだから、これは数には認められないわ」

…そう、学園長が言うように今のはずるしちゃった。

一ノ瀬くんが私の背中に手を回そうとした瞬間、咄嗟に離れたくなって風船を手で押さえちゃったから“お腹で”じゃなくて“手で”割れたもの。

「でもせっかく割れたんだし、質問に答えてコミュニケーションを取るのは大事よ!次はお腹で割ってみてね♡」

そう言ってハート形の紙を一ノ瀬くんに渡した。

やばい、どうしよう。

また一ノ瀬くんに迷惑かけちゃった。

「高橋さっ」

「ごめんなさい!」

ばっと頭を下げた。

一ノ瀬くんの目が見れなくて、ただ床だけを見るようにぐっとなるべく視線が下になるように。

そして、深呼吸をした。

うまく話せるように。

「私…っ、男の子が苦手なの…!昔いじわるされたことあって、それ以来怖くて…っ」

今でも思い出す、小学生の頃。

スカートをめくって来たり、大きな声で嫌なことを言われたり、どんくさいなって怒鳴られたり…それからずっと男の子と話すのが怖かった。

「でもねっ、このままじゃよくないって思ってこの学園に来たの!」

本当は私だって話して見たいし、触れてみたいし、好きな人だって欲しい。

私も恋がしてみたいの。
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