「Of My Disteny」ー手、繋ごうー
ドキドキして顔が上げられない。

こんなこと言われても困るよね、そうだよね、だってみんなここへは金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)になるために来てるんだ。

私みたいなのはお荷物に決まってる…!

「やっぱり?そんな感じかと思った」

「え…?」

一ノ瀬くんの声は明るくて、私の想像と違った。
絶対怒ったり怒鳴ったりすると思ったのに…

「高橋さん、俺と話す時全然目見てくれないから最初から嫌われてるのなか~って思ったんだけど理由聞いて安心したよ!」

それどころかケラケラ笑ってて、男の子ってやっぱり理解できない。

「誰だって苦手なことってあるじゃん?」

「でも、私一ノ瀬くんに迷惑かけちゃう…っ」

「俺だってさっき消しゴム忘れて迷惑かけちゃったし」

「そんなの全然迷惑じゃないよ!」

顔を上げた。

初めて一ノ瀬くんと目が合った。

「俺だって全然迷惑じゃないよ」

笑ってたの。

私の顔を見て、微笑んでた。

「向こうで鮫上くんと倉下さんは風船でバレーしてるし、俺らもする?」

マネするかのように新しく風船を手に取ろうとした、だけど右手に学園長からもらった紙を思い出して一ノ瀬くんが質問を読んだ。

「高橋さんって好きな食べ物何?」

「え、好きな食べ物?」

「うん。あ、ちなみに俺はフレンチトーストね!」

「私は…ポテトかな」

「おっけ、わかった!じゃあ俺をじゃがいもだと思って!」

………え?

一ノ瀬くんがもう一度風船を手に取った。

「変わりたいって思ってこの学園に来たんでしょ?変えてみようよ、ちょっとだけ」

さぁっと、手を広げて。

「俺じゃがいもだから!じゃがいもになりきるから!」

「………。」

「じゃがいもに見えて来た!?」

「……ふっ」

あまりに真剣な顔で言うから、だって制服のボタンを一番上まで閉めてる優等生な一ノ瀬くんがそんな顔で言うから。

「見えてこないよ!」

笑っちゃった。

くすくすと声が抑えきれなくて、思わず笑っちゃったの。

「俺真剣なのに!」

「わ、ごめんっ」

「いいよ、全然」

顔を見合わせる。

視線が交わる。

「さぁ、どうぞ」

緊張はしたんだけど、してるんだけどっ

でも嫌じゃなかった。

微笑む一ノ瀬くんの胸に飛び込むのは全然嫌じゃなかった。


パンッ


割れた風船の中、1枚の紙が出てくる。

拾って質問を読んだ。

「“どうしてこの学園に入学したんですか?”って…」

これさっき私は答えちゃったかも、じゃあ一ノ瀬くんに答えてもらった方がいいよね。

「一ノ瀬くんはどうして七海学園を選んだの?」

さっきよりも真剣な表情をしていた。

「俺も、変わりたいと思ったから」
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