LIBERTEーー君に
1月。
課題曲と自由曲のDVDによる予選審査は、詩月自身、満足のいく出来映えではなかった。

詩月には師事しているピアノ教授と師匠からも辛うじてOKが出た演奏だったが、納得のいかない演奏が悔やまれてならなかった。

コンクールが中止なら郁子が腱鞘炎の治療をし、コンクールに挑戦することも可能かもしれないと期待した。

だが、コンクールピアノ部門は次年度に延期して行われるという発表で、予選審査の結果は持ち越し。

郁子は次年度のコンクールには挑戦できない。

「浮かない顔だな。延期になったのが不満か?」

詩月はレッスン帰り、ミヒャエルがバイトをしているBALでワインを傾けていた。

「いっそのこと中止になってくれたら、緒方には4年の猶予があった」

「何もエリザベートだけがコンクールではないだろ。そんなモチベーションで来年のエリザベートを闘えるのか?」

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