LIBERTEーー君に
13章 雨の歌
「ギムナジウムの先輩というより、ミヒャエルの同級生みたいだな」

貢はミヒャエルと並ぶと、確かに同じ年くらいに見えた。

詩月は真面目そうで、落ち着いた雰囲気が大人びて見えているせいだろうと、貢とミヒャエルを見比べた。

貢は見直した楽譜の解釈を元に、明け方には練習していた。

詩月と貢がBALに着くと、ミヒャエルがピアノの前で待ち構えていた。

既に準備万端、いつでも演奏できるぞと言いたいようだった。

「ブラームスヴァイオリン協奏曲」

口火を切ったのは、貢の方だった。

ミヒャエルはシメタという顔をした。

ケルントナー通りで、ミヒャエルと詩月が何度も演奏したヴァイオリン協奏曲だ。

貢は詩月とミヒャエルが演奏している動画を何度も観ていた。

貢もミヒャエルもお互いの演奏を熟知しているはずだった。

いざ、演奏し始めると互いに1歩も譲らず、音がぶつかり合った。
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