LIBERTEーー君に
コンテスタントたちは自分がどう演奏したかなど、半分覚えていればいい方だろう。

コンテスタントたちは自分で解釈を考えて、どう演奏するか、どう聴かせるか散々に考えて、何ヵ月もかけ曲を仕上げてきた。

詩月は自分の欠点も足りない点も力量も、審査員に言われなくても本人が自覚しているはずだと思う。

アドバイスが無駄だとは言わない。

指摘されて気づくこともある。

だが、それが全てではない。

演奏した曲の出来映えがどうだったかは、演奏した本人が1番よく解っていると。

これを誰かに話すと、決まって屁理屈だと言われる。

貢やミヒャエルに言えば、きっと出来るヤツの言い分だと言うに違いない。

詩月はそう思うと、とても口に出して言う気にはなれなかった。

ともあれ、コンクールは結果が全てだ。

通過できるか、否か。

審査員との相性ーー運も実力の内。

詩月の好きな言葉ではないが。
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