LIBERTEーー君に
なるほどーー貢とミヒャエルは自分たちの状況に戸惑い、詩月が目指していたことを理解した。

「まったく、大した奴だよ」

貢とミヒャエルは観客の囲いから解放され、互いに顔を見合わせた。

「確かに、セミファイナルの演奏は神がかっていた。自分にあんな演奏ができたことが信じられない」

「貢、お前もそう思うか? 俺もだ。ファイナルのチャイコフスキーを弾き終えて思ったよ。セミファイナルの演奏は越えられなかったと」

「当の本人はアッケラカンとしているし、ごく平常心だがな」

「ミヒャエル、周桜を誘って演奏しないか?」

「何!? 此処で?」

「そう、此処の……行くぞ」

貢がロビーを出て、詩月を探して走り出した。

湖畔に吹く風からは、深緑の匂いと湖の匂いがした。

コンクールの熱気が残る避暑地の到る場所で、コンクール関係者や観光客が賑わっていた。

< 197 / 258 >

この作品をシェア

pagetop