LIBERTEーー君に
「日本にいる彼女か?」

「ああ。コンクール、一緒に挑戦する約束だった。彼女のことだ。がむしゃらに頑張って弾いてきたんだろうと、腱鞘炎で弾けなくなるまで」

ミヒャエルは詩月の吐き出す言葉をただ聞いていた。

「何故、指が動かなくなるまで。もっと慎重になるべきだった。練習時間を削って治療に専念していれば、コンクールを断念しなくても」

「彼女はお前とどうしてもコンクールに挑戦したかったんだ、激痛に耐えてでも」

「腱鞘炎、僕も此処に来るまでずっと、治療していた。テーピングし練習時間の半減を強いられ」

「誰もがみんな、お前みたいに弾けないんだ。弾けない焦りと痛みで、医者の指示に叛いてでも練習してしまう」

「悪循環だ」

「痛み止めを使ってでも弾きたい、それが普通だ。練習を1日休めば取り戻すのに2日かかる、知らないわけではないだろ?」
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