あの花が咲く頃、君に会いにいく。
肩を落とす楓に、今日はもういいよ、と笑みを作って言う。


バイトがある楓とわかれ、私は教室に向かう。



…少し、茅乃が気になったから。



中を覗くと、教室には茅乃一人だけが残っていて、机の前で拳を握りしめ突っ立っていた。


どうしたんだろうと近づくと、茅乃の机には悪口が殴り書きされていて、ボロボロに切り裂かれた体操着や教科書が無造作に積まれていた。



誰がやったか、なんとなくわかる。



今日一日中ずっと茅乃のことを見ていたが、昨日の三人組といることはなく、ずっと自席に座っていた。


小説を読んでいる茅乃に、凛達の三人がわざとぶつかったり、トイレに行くために席を立ったら足を引っ掛けたりしている場面を今日だけで三回は見た。しかも、周りにはバレないくらいこっそりと。


昨日までは仲良さそうにしていたのに…。いや、でも、それも本当に仲がよかったのかなんてわからないけど。



茅乃は濡らした雑巾で一生懸命机を擦っていたけど、油性なのかなかなか消えない。


それでも、泣かないためにか唇をきつく噛み締めながら、黙々と一時間くらい時間をかけて机の汚れを消していった。



雑巾を握りしめたまま疲れたように茅乃が椅子に腰掛け、机に突っ伏した。


我慢ができなくなったのか、その瞳からは涙がぽろぽろと溢れていた。



「紫音がいるわけ、ないのに…。もう、紫音はいないんだ…」



小さく呟いた茅乃は静かに涙を流していた。
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