あの花が咲く頃、君に会いにいく。
楓だってバイトがある中、苦手なコミュニケーションを使って、私のために色々してくれているのに。



…だけど、時間は刻々と経っていくのに記憶だけが全然思い出せないことに、どうしても焦りを感じてしまう。



「…あ、早乙女!どこ行くんだよ!」


「茅乃の家、行く。ここにいたって仕方ないし」



呼び止めてくる楓に背を向けて、すいっと壁をすり抜けて外に出る。



茅乃の家なんて知らないのに、ボーと飛んでいるうちになぜか“中町”と書かれた表札の前に着いていた。


記憶はなくても、体が覚えているみたいだ。



「茅乃、どうしたの?ボーとしちゃって」



壁をすいーっとすり抜けて中に入り、明かりのついているリビングに顔を出すと、ちょうど茅乃、お母さん、お父さんの三人で夕飯を食べているところだった。



「あ…ううん、なんでもない。ごめん、食欲ないからもういらないや」



茅乃は無理しているのがバレバレの笑顔で、まだ一口しか食べていないハンバーグを残して立ち上がった。



「最近元気ないけど、どうかしたか?母さんも心配してるんだぞ」


「そうよ。何かあるなら、言ってちょうだい」


「…ほんとに、なんでもないから。おやつ食べすぎちゃっただけ。ごちそうさま」
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