オタクな俺とリアルな彼女。
先輩の照れ隠し。
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翌日も,俺はカフェへ足を運んだ。
いない可能性もある,が。
見透かされるだろうなぁ。
もし逢えたなら,きっと呆れた顔をされるだろう。
『起きろ』
少し眠った後,先輩は約束通り俺を起こしてくれた。
身体を起こすと,肩には先輩が身に付けていたはずの羽織がかかっていて。
薄い生地のそれは簡単に落ちそうになって,けれどとっさに掴んだ事にひどく安堵した。
ありがとうございますと返すと,先輩は一瞥して
『構わない』
と答えた。
またその次に
『そんなことよりも。1つ約束したまえ,薫』
顔色を変えず,そんな事を言った。
間髪いれず返事をした俺。
『これから……そうだな,自然に眠気がやって来るまでにしよう。君は7時間以上毎日きっちり睡眠をとれ。私の配信によって生活を壊す人間がいるのは迷惑だ』
さもなけば,と単調に言われ,その続きは俺にとっての爆弾だった。
『私は一時的に配信を閉じようと思う。それこそ友人を家に呼べば問題はない。無論,リスナーに理由の説明をすることも告知をするつもりもない。たまたま今は毎日時間を取っているが,元々そうすると言った覚えはないからな』
先輩が,配信を? 閉じる?!
俺の,せいで?
『そんな!』
『睡眠に適した食なども存在する,意識するといいだろう。それから夜食を摂るのも必要でないならやめたまえ。風呂も寝る前でなく,配信開始前には済ませておくように』