オタクな俺とリアルな彼女。
「先輩,ここ,いいですか?」

「……君か。他に空きがあるようだが?」

「ここがいいです」

「……好きにしろ」

「ありがとうございます」



思ったよりあっさり受け入れられて,俺はほっと胸を撫で下ろした。

色んな人間に奇異の目を向けられたけど,もう構わない。

何せ"俺の公開プロポーズ"はあちこちに広まった後だったからだ。

ともやんにそれを聞いて,俺はもう開き直ることにした。

恨みがましく俺を見る野郎もいる。

普段からこの席の周辺を陣取っていたのだろう。

知ったことか。

先輩がいいって言うんだからいいんだ。

べっと心で舌を出す。

子供っぽいとすぐに止めた。



「ところで,約束は守ったようだな。昨日よりいくらかましな顔をしている」



先輩は本を閉じ,左手で頬杖を着きながら俺を眺める。

俺もどきどきしながら「はい」と返事をした。

だから…大丈夫なんだよな?

約束は守った。

先輩が配信を止めることはないはずだ。



「先輩は……寝れなかったんですか?」



先輩はあくびを止めて,身体と平行に置いてる右手で,拳を握った。

まずったかな…

他人の前で気を抜くなんて意外だと思っただけだったんだけど…

あの拳には何の意味が意味があるんだろう。

昨日も何度か同じような動作をしていた。



「うるさい」

「え?」

「…黙れと言ったんだ。余計な詮索をするな」

「え?」



先輩は拗ねたように唇を閉じている。

あ,もしかして…
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