あの日の誓い
***
病院から帰ったあと、いち早くハナに報告すべく「大事な話があるから、ウチに来てほしい」というLINEを送った。
その後の返信で、互いの都合のいい日どりを決め、来院してから3日後にあたる今夜来ることになった。日を置かずすぐにハナに逢えることに、内心安堵する。私自身、真実を知っているゆえに、モヤモヤを抱えたまま生活するのは、正直なところつらいところもあった。
ローテーブルに書類を置いて、準備万端にしている最中に、インターホンの音が部屋に鳴り響く。
(――時間どおりに来た。これからが正念場!)
内心気合を入れつつ、モニターでハナが来たことをしっかり確認してから、鍵を開けて中に促した。
「絵里からの呼び出しって、いったいなに~? もしや結婚報告会?」
「そんな、めでたいことなら良かったんだけどね……」
楽しそうなハナの両肩を掴んで、ローテーブルの前に座らせてから、向かい側に同じように座った。
「ハナ、とりあえずこの書類に、目を通してほしいんだけど」
まずは言葉じゃなく、目から情報を入れてもらうことにした。用意していた書類を、無造作に手渡す。
「なにこれ……」
報告書を読みながら呟いたハナにわかるように、手短に返事をする。
「津久野さんの本性だよ」
「絵里がどうしてこんな――」
どこまで読み進めたのか、わからなかったけれど、ハナが理解できるようにしなければと、意を決して口を開く。ハナの視線は、ずっと書類に釘付け状態だった。
「不倫の末に奥さんから略奪して、結婚しているカップルが世の中にいることも知ってる。ハナがしあわせになるなら、応援してあげたいと心から思ってた」
「…………」
「津久野さんがハナをしあわせにすることができる人物かどうか、探偵事務所に依頼して調べてもらった結果がそれなんだよ」
私が言いきった途端に、ハナは手にした書類をローテーブルに置き、怒った顔で口を開く。
「私が結婚するかどうかなんて、絵里には一切関係ないでしょ!」
「ハナ……」
「わざわざ探偵使ってまで調べるとか、頭がおかしいんじゃないの?」
ハナの右手が大きく上下して、ローテーブルを殴った。静まり返る室内に、叩いた音が大きく響く。その衝撃音に心が揺れ動いたものの、これくらいで動揺するわけにはいかない。
「おかしいと思うかもだけど、ハナには不幸になってほしくなかった! 今までも散々苦労してるのを、傍で見て知ってるし」
「だからって、ここまでする? 絵里ってば本当は私が先に結婚することが妬ましくて、嘘の報告書をでっち上げたんじゃないの?」
「嘘じゃない証拠に、津久野さんを調べてくれた探偵さんを紹介してあげる。彼がすべて教えてくれるよ」
ハナの金切り声に負けないような大きな声で告げると、目の前の瞳がゆらゆら揺れ動くのがわかった。怒りと悲しみがまじったそれを見たからこそ、チャンスだと思った。
病院から帰ったあと、いち早くハナに報告すべく「大事な話があるから、ウチに来てほしい」というLINEを送った。
その後の返信で、互いの都合のいい日どりを決め、来院してから3日後にあたる今夜来ることになった。日を置かずすぐにハナに逢えることに、内心安堵する。私自身、真実を知っているゆえに、モヤモヤを抱えたまま生活するのは、正直なところつらいところもあった。
ローテーブルに書類を置いて、準備万端にしている最中に、インターホンの音が部屋に鳴り響く。
(――時間どおりに来た。これからが正念場!)
内心気合を入れつつ、モニターでハナが来たことをしっかり確認してから、鍵を開けて中に促した。
「絵里からの呼び出しって、いったいなに~? もしや結婚報告会?」
「そんな、めでたいことなら良かったんだけどね……」
楽しそうなハナの両肩を掴んで、ローテーブルの前に座らせてから、向かい側に同じように座った。
「ハナ、とりあえずこの書類に、目を通してほしいんだけど」
まずは言葉じゃなく、目から情報を入れてもらうことにした。用意していた書類を、無造作に手渡す。
「なにこれ……」
報告書を読みながら呟いたハナにわかるように、手短に返事をする。
「津久野さんの本性だよ」
「絵里がどうしてこんな――」
どこまで読み進めたのか、わからなかったけれど、ハナが理解できるようにしなければと、意を決して口を開く。ハナの視線は、ずっと書類に釘付け状態だった。
「不倫の末に奥さんから略奪して、結婚しているカップルが世の中にいることも知ってる。ハナがしあわせになるなら、応援してあげたいと心から思ってた」
「…………」
「津久野さんがハナをしあわせにすることができる人物かどうか、探偵事務所に依頼して調べてもらった結果がそれなんだよ」
私が言いきった途端に、ハナは手にした書類をローテーブルに置き、怒った顔で口を開く。
「私が結婚するかどうかなんて、絵里には一切関係ないでしょ!」
「ハナ……」
「わざわざ探偵使ってまで調べるとか、頭がおかしいんじゃないの?」
ハナの右手が大きく上下して、ローテーブルを殴った。静まり返る室内に、叩いた音が大きく響く。その衝撃音に心が揺れ動いたものの、これくらいで動揺するわけにはいかない。
「おかしいと思うかもだけど、ハナには不幸になってほしくなかった! 今までも散々苦労してるのを、傍で見て知ってるし」
「だからって、ここまでする? 絵里ってば本当は私が先に結婚することが妬ましくて、嘘の報告書をでっち上げたんじゃないの?」
「嘘じゃない証拠に、津久野さんを調べてくれた探偵さんを紹介してあげる。彼がすべて教えてくれるよ」
ハナの金切り声に負けないような大きな声で告げると、目の前の瞳がゆらゆら揺れ動くのがわかった。怒りと悲しみがまじったそれを見たからこそ、チャンスだと思った。