真面目な鳩井の、キスが甘い。

深くて熱いインターバル

 球技大会、当日。



 私はドッジボール女子の部でさらっと優勝をもぎ取った。

 みんなと喜びを分かち合うのもそこそこに、息を切らして駆け込んだ体育館。

 そこには大勢の人でごった返していて、来る運命の一戦に、独特の緊張感を漂わせていた。


「ヒナちゃん、ここあいてるよ!」


 事情を知ってるクラスの女の子が場所をあけてくれて、「あっ、さーせん」とヘコヘコしながらそこへ向かうと他の人もどーぞどーぞと道をあけてくれる。

 う…ちょっと恥ずかしい。

 無事に最前列に到着すると、コートでは今まさに試合開始のための挨拶をしようと、メンバーたちが向き合って立っている所だった。


「あれから三週間だね。悪あがきできた?」


 わざとらしい笑みを浮かべたノアが言った。

 その両隣では、背の高いゴリラみたいな男子が自信に満ちた表情で晴翔たちを見下ろしている。


「そっちこそ。このあと泣き腫らしてモデルの仕事できなくなるけど、大丈夫か?」


 ノアの対面で、今にも掴みかかりそうな空気の晴翔がそう返す。

 ノアと晴翔は口角をあげてはいるけど、目に光がない。


「お……お前ら、バチバチなのはいいが正々堂々とな?ケガしないようにな?」

 審判の先生が心配そうに言うと、「「わかってます」」と返す低い声×2。

 先生はそれ以上何か言うのを諦めたみたいだった。

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