真面目な鳩井の、キスが甘い。
「…あ!ヒナー♡」

 ノアが私に気付いて満面の笑みで手を振る。

 そして一気に私に集まるみんなの視線。

 ザワザワとした体育館から声が聞こえてくる。


「あれが読モのヒナ?本物可愛いー」

「この試合、ヒナちゃんをかけてるってガチ?ノアくんが勝ったら付き合うんだろ?」

「え?でもヒナちゃんて晴翔くんと付き合ってるんじゃないの?」

「だから勝負すんだろ!今から!」


 ひえーものすごい噂になってる~!一部フィクション混じってる~~~!


「僕が勝ったらキスしようねーヒナー♡」


 ノアが大きな声で言うので、会場がヒュウ〜♪と盛り上がる。

 私は一人、ぶわわわっと鳥肌を立たせて震えあがった。


「やだよ!絶対嫌!!ていうかこの試合がどうなっても私絶対ノアの彼女になんかならないから!なりませんからー!!」


 みんなにも聞こえるように大きい声で言うけど、大盛り上がりのみんなは私が照れ隠しで言ってると思ってるみたいだ。


「えー?でも、約束したよね。晴翔」

「…大丈夫だ、日向。絶対負けねぇから」


 いや、晴翔、見て?隣の尾道くん始まる前から泣いてるよ?


 全然気付きそうにない晴翔は、「っシャァー!!」と雄叫びをあげて自分を鼓舞している。


 そしてその隣、やっぱり無表情な鳩井と、目が合った。


「……!」


 そしてそらされる。

< 126 / 320 >

この作品をシェア

pagetop