真面目な鳩井の、キスが甘い。
「……波木さん」


 私のしょんぼりを悟ったんだろう鳩井が、私の手を握る。


「…………ごめん」


 そう言った鳩井が本当に申し訳なさそうで、こんな顔させちゃってる自分が嫌になって慌てて笑顔を作る。


「あっ、でも、放課後毎日会ってくれるんだよね!?」

「うん」

「じゃーいいや!それだけで充分、幸せ!フフッ」


 うん、そうだよ。

 鳩井が私を好きになってくれて、彼氏になってくれた。

 それだけでもう、ハッピーハッピーだよね!
 
 
「……あ!でもごめん、美愛には昨日電話で言っちゃった!」

「あぁ、うん、仲いい人に言うのは全然……澤くんには?」

「晴翔にはまだ!言わないほうがいい?」

「いや……」


 鳩井は親指で下唇を押しながら何か考え込む。


「……言っていいよ」


 口の中でつぶやくように言った鳩井に、一応「わかったー」と返しながら頭の中でははてなマークだらけ。

 鳩井はやっぱり、何を考えてるかわからない時の方が多い。


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