真面目な鳩井の、キスが甘い。
「はと、和音くんはつまんないのがいいんです!いつも地味!いつも普通!それとこのひょろっともやし感、最高じゃないですか!!」


 我ながら胸に響く熱いプレゼンだ!


「……波木さん」


 鳩井が私の服の裾を引っ張って、座るように促す。


「それフォローになってない」

「えっ?あれ?」


 冷や汗をかく私に、敦子さんが「フフッ」と嬉しそうに笑った。


「ヒナちゃんが和音のこと大好きだってことはよく伝わってきたわ。ありがとうねヒナちゃん。こんな地味で頼りない子だけど、これからもどうぞよろしくね」


 『これからも』……!


「はい……!」


 嬉しくて、わっと胸が熱くなる。


「さてと。そろそろ行こうかしらねー」


 そう言って敦子さんが立ち上がるとお父さんと音色ちゃんも腰をあげる。


「お兄ちゃん戸締りしっかりね。あ、お鍋のカレー食べていいから」

「うん」


 お父さん、敦子さんは玄関に荷物を次々と持ってきて、音色ちゃんも奥の部屋から自身のバッグ、帽子を身に着ける。

 鳩井家があわただしくする中、鳩井だけは立ち上がる気配はなく私の隣に座ったまま。


「あれっ、皆さんどちらへ?」


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